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★★飯塚市の現状から未来を考える★★飯塚市議会議員兼本芳雄のブログです‼

子どもたちの命を守るための児童虐待防止対策

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令和2年度飯塚地区保護司会と飯塚市立小中学校教頭会の合同研修会で飯塚市教育長の挨拶

11月は児童虐待防止推進月間 


国は、毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と定め、家庭や学校、地域等の社会全般にわたり、児童虐待問題に対する深い関心と理解を得ることができるよう、期間中に児童虐待防止のための広報・啓発活動など種々な取組みを集中的に実施します。

飯塚市においては、昨年4月から施行された「飯塚市の子どもをみんなで守る条例」第17条第2項で児童虐待防止推進月間は、毎年11月とすると定め、同条第3項で、市は、児童虐待防止推進月間において、関係機関等、子育て支援団体等その他児童虐待の防止等に関係する機関、団体等と連携し、その趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めるものとすると定めています。

 この条項に基づき、飯塚市では児童虐待防止に関する事業が今月実施されました。また飯塚市長は、令和2年度第1回定例会において、平成30年度児童虐待に関する状況の報告を、条例第28条に基づき行いました。そこで、飯塚市児童虐待防止に関しての問題点や今後の取組みについて考えてみました。 



 

家庭児童相談件数は昨年度より増加


平成30年度の家庭児童相談件数は2,254件(182世帯)で、前年度と比べ152件(35世帯)、7.2%(23.8%)増加。

1.年齢
0歳から3歳までが65世帯で最も多く、全体の 35.7%を占めています。

2.相談の経路
保健センターが85世帯で最も多く、全体の 46.7%を占め、次いで多いのは学校で、全体の19.2%。医療機関は6.0%。

3.相談内容
児童虐待相談の占める割合が高く、身体的虐待が17.9%、心理的虐待が17.1%、 保護の怠慢・拒否(ネグレクト)が16.0%で、全体の51.0%。

4.対応状況
助言指導が最も多く、全体の59.3%でした。

 

児童虐待相談件数は大幅に増加


児童虐待のみに絞ってみると、児童虐待相談件数は1,149 件(50世帯)。

前年度と比べ518件(15世帯)82.1%(42.9%)増加し過去最多。

1.虐待相談の経路
学校が14世帯で最も多く、全体の28.0%。医療機関からは8.5%。

2.主たる虐待者
実母によるものが最も多く、全体の68.0%(34世帯)。

3.虐待の種別
身体的虐待が 22 世帯で最も多く、全体の44.0%。
保護の怠慢・拒否(ネグレクト)が、全体の40.0%。

4.被虐待児童の年齢
7歳から 12 歳まで(小学生)が最も多く、全体の 44.0%。

5.対応状況
継続になるものが最も多く、全体の 78.0%。

6.世帯状況
ひとり親世帯が最も多く、全体の 58.0%。

 

飯塚市の取組み


平成29年11月に「児童虐待防止」に関する協定を締結した桂川町、福岡県田川児童相談所、 福岡県飯塚警察署及び飯塚病院(児童虐待防止拠点病院)と飯塚市が連携し、広報・啓発に取組んでいます。

1.児童虐待防止推進月間の具体的な取組み
街頭啓発活動、子どもの虐待防止講演会、横断幕・のぼり旗設置。

2.早期発見・早期対応のための取組み
児童福祉法第25条2に基づく、「飯塚市要保護児童連絡協議会」を設置し、「代表者会議」、「部会」、「実務者会議」の3層構造により、関係機関と連携を行うとともに、要保護児童等の実態把握及び具体的な支援内容等について、協議を行っています。
急激に増加している児童虐待事案に対応するため、家庭児童相談員の増員を行うとともに、令和元年度には保健師を配置し、家庭児童相談室の体制強化を図っています。

 

福岡県医師会母子保健委員会の答申


福岡県医師会母子保健委員会は本市の児童虐待の状況に次のような答申を行いました。

1.身体的虐待が最も多かったが、ネグレクトの件数が増加(11件が20件)しており、医療現場でも同じ印象。ひとり親で働いている方が多く、子育ての余裕がないことも要因のひとつ。今後は、ネグレクトに対して、行政、医療機関が早期の発見、把握を行えるように工夫が必要。

2.飯塚市の地理的な特性として、福岡、北九州の都市圏と近接しており、アクセスが良い。そのため、生活の拠点と現住所が異なる場合がある。筑豊圏内での往来も多く、現住所のみでの把握では不十分。日常診療においても、遠方の住所の方が来院されることが多々あり、実際には生活の主体が飯塚市近辺の親戚の家であったり、パートナーの家で生活している事例もある。こうした背景もあり、住所だけで縛られない把握が必要。そのためには、地域を越えた情報提供などの連携が必要であり、医療機関に対しても積極的な情報提供が望まれる。

3.拠点を包括支援センターにしてもよいし、セキュリティ、個人情報などの制約があるのであれば、飯塚市飯塚病院児童虐待防止拠点病院に指定されていることから、情報をそちらに集中し、各医療機関からの問い合わせや報告をそちらにするのもよいかもしれない。

4.すでに問題のある家庭に関しては、ある程度のチェックが入ると思われるが、これからは発見しにくいネグレクトや、虐待の早期発見をどのようにするかが大切である。

5.家庭環境に関わらず、年齢を問わず不特定多数の方が利用し、プライベートな情報を得るには、地域に根差した小規模クリニックは適している。小児科でなくても親子で来院された雰囲気を見ておかしいと思うこともある。そうしたちょっとした“気づき”を生かせる方策が必要。そのためには敷居の低い情報照会、情報提供の体制の確立が必要。

 

飯塚市子どもをみんなで守る条例


飯塚市の子どもをみんなで守る条例は議員提出議案で、議会で承認された条例です。

実は、飯塚市の子どもをみんなで守る条例は、私を含め4人の議員が調査研究し、提案した条例です。飯塚病院AI-CAPの皆さんをはじめ条例作成に協力いただいた関係機関等や子育て支援団体の方々には感謝いたします。この条例を提案するにあたり、児童虐待防止のためには、早期発見・早期対応が重要だとの認識のもと、関係機関等や子育て支援団体そして地域とどのように連携していくか。そこをクリアできなければ虐待防止はできないと考えていました。
今回の福岡県医師会母子保健委員会の答申は、そのような問題点を的確に指摘しています。
また、条例の施行により飯塚市児童虐待の傾向が具体的に見えてきました。

 

児童虐待相談件数が増加した要因


1.児童虐待の態様のうち、本市ではネグレクトが増加しています。

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なぜネグレクトが増加しているのでしょうか?
世帯別でみると次のグラフのとおり、ひとり親世帯の児童虐待が最も多くなっています。飯塚市は、母子保健委員会の答申にもあるように、ひとり親で働いている方が多い地域です。また非正規雇用の方が多く、生活のためにダブルワークやトリプルワークをされている方が多くいらっしゃいます。
孤立した家庭が多く、子育てに余裕がないことが考えられます。

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2.本市の平成30年度の児童虐待相談件数は、前年度と比べ518件、82.1%増加しています。それは面前DVの急増が原因だと考えます。面前DVとは、どちらかの親が子どもの前で、配偶者に暴力をふるったり、暴言を吐いたりする行為です。
言葉で脅したり、きょうだい間で扱いに差をつけたりすることは心理的虐待です。
面前DVはこの心理的虐待に含まれます。
背景には警察がDV事案にかかわった際、その家庭に子どもがいれば児童相談所に通告することが徹底されたからです。

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児童虐待防止の問題点


本市の児童虐待を防止するためには、次のような問題点を解決していかなければならないと私は考えています。

1.学校・保育所・幼稚園・病院・児童相談所飯塚市担当部署・飯塚市要保護児童連絡協議会とのリアルタイムな情報共有ができていない。

2.通報窓口の一元化やデータの一元化ができてなく、リアルタイムな連携がとれていない。

3.児童虐待を防止するには、関係機関等、子育て支援団体等その他児童虐待の防止等に関係する機関や団体等多くの関係機関と連携することが必要だか、個人情報に制約があり連携する機関が限られている。

4.虐待の早期発見・早期対応の取組みが確立していない。

5.ひとり親世帯への生活支援や子どもの貧困に関する施策の強化がなされていない。

福岡県医師会母子保健委員会の答申にも積極的な情報提供、情報の共有化、情報提供の体制の確立が必要であること。また虐待の早期発見をどのようにするかが大切であり、行政や医療機関が早期の発見、把握を行えるように工夫が必要であると示されています。

 

問題点を解消するには


問題1.通報窓口やデータの一元化と関係機関等とのリアルタイムな情報共有を行うためにはどうしたらいいのか?

一緒に条例を調査研究した同僚議員より、先日受講した講座で紹介されたアプリが有効ではないかとの提案がありました。そこで、現在も児童虐待防止について調査研究に協力いただいている飯塚病院AI-CAPが、定期的に行っている勉強会で、そのアプリの説明会を開催しました。
サイボウズ株式会社が開発した児童相談所向け特別プランの「kintone」というアプリでした。クラウドサービスを利用するのですが、その利用料を5年間無料提供してくれるという特別プランです。既に、京都府南丹市岩手県陸前高田市、埼玉県ふじみ野市大阪市生野区の4つの自治体が、児童虐待防止の地域連携のために導入しているとのことです。
このアプリを使った事例として、虐待通報を受付、記録し、対象児童の住所、家族構成、定性情報リストを作成、対象児童の経過を関係者が都度記録でき、学校等からの情報提供を市役所の担当部署が、毎月定期的に受領することができるとの説明がありました。
虐待通報の一元化ができ、対象児童に関わった関係者が、都度対象児童の情報をアプリに入力するだけで、アプリで連携している関係機関等のすべての関係者がリアルタイムに情報を共有できるのです。
虐待の情報は個人情報になるので、秘密保持のため、現在のところ関係機関等は限定されます。今後多くの関係機関等や地域と連携するルール作りの調査研究が必要です。しかし、このアプリは本市の問題を解消する一つのツールになるのではないかと考えています。


問題2.虐待の早期発見・早期対応の取組みを確立するためにはどうしたらいいのか?

飯塚市は、講師に特定非営利活動法人にじいろキャップの代表理事重永侑紀氏を迎え、「学校・保育現場における児童虐待の早期発見及び対応について」11月6日に飯塚保護区保護司会と飯塚市小中学校教頭会の合同研修を、11月9日に私立保育園長会の研修を、児童虐待防止推進月間における事業として行いました。

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私も研修に参加し、小中学校や保育現場における子どもたちの虐待の兆候の発見やその対応について学ぶことができました。危惧したことは、コロナ禍で学校が休業となったことにより、虐待が潜在化しているのではないかとの指摘です。

1.非常に悲しいことですが、全国での児童虐待による死亡数は、年間350人。学会では、350人から500人と考えられているとのことです。理由は、虐待が原因で死亡したのか不明な子供たちが多くいるからとのこと。

2.学校で児童虐待の兆候を発見するには、小学校3年生までは虐待を受けたことが、そのまま行動に出るので、その行動を見逃してはならない。例えば、学校で暴力的な子供の対応は、家庭で自分がされていることがそのまま出ているとのこと。

3.ネグレクトを受けている子どもは、情緒的に対応されていなく、保護者との関係が脆弱なので、誰にでもべったりくっつく傾向がみられる。また、反省ができなく、目を合わせることが苦手。

4.虐待を受けている子どもは、小学1年生では愛着形成が脆弱で語彙が少ない。

5.自傷行為がある子は400倍から700倍自殺行為の可能性がある。

6.対応として、子どもたちが、常に安全で安心でき、守られていると感じる学校生活が必要。また、先生は、子どもの話を黙って聴く、最後まで聴く、嬉しそうに聴くことが大切。

7.虐待の連鎖について、7割は虐待をしないとのこと。虐待をするかしないかは、誰かに話すことができた・信じてもらえた・日常的なケアを受けることができたかできなかったかの違い。

8.大切なことは、子ども自体が権利の対象者であること。

ほかにも様々な虐待の兆候や具体的な事例の対応の仕方について、アドバイスがありました。この研修を虐待の早期発見・早期対応の取組みの確立のために、しっかりと生かしていかなければなりません。

 

問題は山積み


飯塚市児童虐待について考えてきましたが、まだまだ問題は山積みです。
地域との連携のためには個人情報の問題をクリアにしなければなりません。また、ひとり親家庭の経済支援や子供の貧困問題。これは議会の責任です。行政としっかりとした議論を行い、施策の強化を早急に行っていきたいと考えています。